2005.09.09
イングランド建築調査7
日目!

この日は、イングランドの東部を南に下り続ける旅程で、いよいよ旅も終盤にさしかかってきた感じ。
まず最初の見学地はリンカーン大聖堂です。
よく晴れた強い日差しのなかで彼方に聳え立つ尖塔が、心を沸き立たせてくれます。


リンカーン大聖堂のファサード。
一見イギリス・ゴシックに特有な幅広の水平的なファサードに思えますが、
よく見ると、もともとは2つの塔の幅のファサードだったものに、
両脇のアーケード層を継ぎ足したことがわかります。
これがなかったときには、異常なほどに垂直性が際だつファサードだったことでしょう。


内部はソールズベリー大聖堂に似た、黒いパーベック大理石を多用した多色彩の空間。



黒いモノリスのシャフトだけでなく、アーチに施された刳り型の一つ一つが
繊細なまでの線条性を生み出していて、非常に軽快な印象を与えてくれます。
写真は身廊の立面。


内陣に入ると、身廊の構成とそれほど大きな変更はないものの
濃厚なまでに装飾性が高まっていて驚かされます。


そのコッテリとした濃厚な装飾を作り出している要因の一つが、より一層、細かく彫りの深くなった刳り型にあるようです。
ホイップ・クリームをギザギザのついた口から絞り出したときのような細い筋が幾重にも入ったアーチは
遠目に見てもこれほどに存在感を出すのかと驚かされました。


チャプター・ハウスでも黒い大理石のシャフトが多用され、線条性が強調されています。




続いてピーターバラ大聖堂。
高さ26mにも達する巨大なアーチを3つ並べたこのファサードの構成は、
イギリス・ゴシックの中でも特異なデザインで、これを絶賛する人と酷評する人とに分かれるといいます。
古典主義的なポーティコを、ゴシック様式で実現したものと説明されることもあるようですが、
とにかく他にまったく類を見ないこのデザインは、一見に値します。


身廊はノルマン・ロマネスク様式の代表作の一つ。
木造天井の装飾の美しさも特徴的です。


イギリスの大聖堂で時々見られるのが、身廊の中央に置かれた長櫃の上面が巨大な鏡となっているもの。
天井を見上げなくとも、これを覗き込めば天井の美しい装飾が見られるというわけです。
あたかも箱の中に逆さまの大聖堂が閉じこめられているようで、なかなか面白い仕掛けだと思います。


交差部の天井の見上げ。右手が身廊、左手が内陣になります。
交差部の採光塔は14世紀に建設されたもの。


内陣もまた、ノルマン・ロマネスク様式になっています。



大聖堂の最奥部は1496-1508年にかけて建設されたファン・ヴォールトの美しいゴシック様式。
様々な時代の様式が混在するピーターバラ大聖堂は、見る人を飽きさせることがありません。




この日、最後に訪れたのはイーリー大聖堂。
写真では露出補正のおかげで空が明るく見えますが、日は暮れかかり雨も降り出して、真っ暗という印象です。


というわけで内部も、肉眼では目が慣れてくるまで天井の模様などまったく見えないほどの闇に包まれていました。
写真に撮るとこれだけ像が浮かび上がってくることに驚いたほど。


イーリー大聖堂の身廊もノルマン・ロマネスク様式。
天井画の色彩は、どこかアジア的に感じます。


なんといってもイーリー大聖堂のハイライトは、この交差部の採光塔(lantern tower)。
1322年に、もともとここにあったノルマン時代の塔が崩落し、まったく新しい構造で再建したもの。
8本の巨大な支柱が八角形の基部を形作り、その中央に木造の八角形の塔が浮かび上がっています。


この驚くべき採光塔から、真昼の太陽光が燦々と差し込んでくる姿が見てみたかった・・・
ミサ中のため有名なレイディー・チャペルも見学できなかったため、
チャンスがあればもう一度訪れたい大聖堂、第1位ということになりました 。


内陣から交差部、身廊の見返し。


八角形の採光塔の遠景。
霧雨で霞んでしまっています。

この日はそのままケンブリッジまで車を走らせ、そこで一泊となりました。


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