ラン大聖堂、身廊立面詳細
ランス、サン=レミ大修道院、内陣立面

ラン大聖堂における水平性 
初期ゴシックの添柱デザイン

日本建築学会計画系論文集/No.540/pp.295-300/2001年2月
正会員
加藤耕一君……日本学術振興会海外特別研究員
        パリ第4(ソルボンヌ)大学客員研究員
かとうこういち 1973年生まれ/東京大学卒業/
東京大学大学院修了/建築史/博士(工学)


 一般に垂直性を重要なテーマにしたといわれるフランス・ゴシックの初期の代表例であるラン大聖堂の内部立面の「水平性」に注目し、盛期ゴシックの代表例とされるシャルトル大聖堂などへのその影響の可能性を論じたものである。
 添柱とコーニスとの取り合い部のディテールを中心に、初期ゴシックの現存例を3種類に分類し、ラン大聖堂だけがそれらにあてはまらないこと、その一方で、シャルトル大聖堂をはじめ、盛期ゴシックの代表例とされるランスやアミアンなどにおいても、ランと同様のディテールが見られることを指摘し、さらには外部の立面構成にも同様の水平分割が見られることに注意をうながして、それらにランのデザインの影響があると考えられることを述べている。
 ディテールを丁寧に見ることから考察を展開している点、ディテールを中心に考察しながらそこで示された見解がフランス・ゴシックの見直しにつながりうる点、つまりコンテクストを視野に入れつつ特定の対象を認識する姿勢と今後の研究の可能性を感じさせることが、高く評価できる。

『建築雑誌』vol.119、No.1522、2004年8月号
「推薦理由」のページより


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