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■フランス人の気質とデータベース

 まだまだフランス人をつかみ切れたわけではありませんが、以前から感じていることがあります。色々なシーンで、彼らは気楽ないい加減さ(おおらかさ?)と驚くほどの緻密さとマメさを併せ持っているなと感心させられるのです。

  たとえば、図書館でコピーをとってもらうとき、図書館の資料は多くの場合、自分ではコピーをとれないのでお金を払ってコピーしてもらうわけですが、時々プロ魂を持った職人的コピー係の人に出会います。そういう人の場合、コピーが少し曲がっただけで、「この分はお金を出さなくていいから」と断った上でとり直してくれるのです。普段の生活の中でフランス人のいい加減さに慣れてくると、こういったことが余計に印象的に感じられます。

 彼らの緻密さを常々感じさせられているのが、研究でお世話になっているデータベースです。フランス文化省が中心になって進めている一連のデータベース群は、とにかく良く作ったものだと感心させられます。僕がこれらのデータベースと出会ったのは、東京理科大学で助手を務めていたときに東京理科大学教授の川向先生の薦めでフランスのデータベース事情を調べてみたのがきっかけでした。これは川向先生が中心となっている、日本建築学会で歴史的建築のデータベースを作ろうという動きを補完するための海外の事例調査で、まさかそれが研究の重要なツールの一つになるとは思いもしませんでした。

 「メリメ」というのが、フランスにおける建築データベースの名前です。これは19世紀に歴史的建築の修復という分野を切り開いた作家プロスペール・メリメにちなんでいることは言うまでもありません。「メリメ」はこれと並列の位置関係にある画像データベース「メモワール」や家具データベース「パリシー」などと相互に補完しあいながら全体として建築および文化財の巨大データベースを構築しています。ここまでは以前、建築学会でもご報告しました。こちらに来てさらに驚いたのは、歴史的文化財のアーカイブとなっているMediatheque de l'Architecture et du Patrimoine (建築・文化財メディアテーク)の資料も、同じ仕組みのデータベースとなっていて、これもまたメリメと連動しているのです。こうしてフランス文化省のデータベースは相互にリンクして関連づけられながら、巨大なデータベースを構築しているわけです。

 フランス人の研究者にとってこうしたシステマティックな緻密さはとても重要なのだろうなと思わされたのは、こちらに来て僕が所属する研究室の教授と今後の方針について相談したときでした。彼は「リストを作ったか?」という点を強調していました。いまさらのように、そういう基本的なことを強調するところに、彼らの研究スタンスを感じたわけです。僕個人としては、これまで、そういうシステマティックな方法論によって見落とされてきた部分を拾い上げるような研究をしてきたのですが、せっかくパリに来たのだからここは一つ彼らの方法論にどっぷりつかってみるのもいいだろうと、リスト化を進めています。膨大になりつつある資料整理にはブラウザが便利なので、写真を整理してHPにアップし始めています。いずれリストが完成すれば検索が楽になると思いますが、今は単純に載せているだけです。ゴシック建築だけでなくサヴォア邸やパサージュなども同じフォーマットで少しずつアップしていますので、時々のぞいてみてください。

ゴシック建築のリスト 
パサージュのリスト  
サヴォア邸      


(2004.9.24)
 

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