文化財の日 その2 ラブルースト編



Pentax *istD + DA16-45mm
昨日の予告通り、今日はラブルースト巡りをしてきました。まずは旧国立図書館のSalle Labrousteです。ここはD・ペローの新国立図書館のオープンにより国立図書館としての役目を終え、国立美術史研究所(L'Institut National d'Histoire de l'Art)の図書館になります。図書館の夏休みは今日までなので、明日からここで資料調査をしようと思っていたのですが、見ての通り書架は空っぽです。まだ当分は機能しないかも知れません。


Pentax *istD + DA16-45mm
それはともかく、ラブルーストの国立図書館です。W・ベンヤミンもこのドームの下でパサージュ研究をしていた思うと、興奮してしまいます。初めて訪れたのですが、思ったより小さい部屋でした。見上げて写真を撮ると美しい細い柱が台無しですが、お許しください。フォトギャラリー の方に、もう少し大きい画像がおいてありますので、こちらもあわせてご覧いただければと思います。ドームはこの9個のみで、4本の鋳鉄の細い柱が印象的にこれを支えています。


Pentax *istD + DA16-45mm
1枚目の写真を見ると、4本の鋳鉄の柱以外は太い石の柱型が支えているように見えるかもしれませんが、実はこの写真のように柱型の前面に同じ鋳鉄の柱が添えられ、結局9個のドームは16本の鋳鉄の柱で支えられていることになります。壁体の前面に細い柱を添えてこれで天井を支えるシステムは、サン=ドニで登場したアン・デリのシャフトとリブ・ヴォールトのシステムときわめてよく似ています。ゴシック建築におけるアン・デリのシャフトに関する研究が現在の僕のメインテーマであり、色々考えさせられました。


Pentax *istD + DA16-45mm

続いて同じくH・ラブルーストのサント=ジュヌヴィエーヴ図書館です。国立図書館の方が1868年、こちらの図書館は1847年ですから、約20年古いことになります。ここでも、細い鋳鉄の柱が印象的ですが、天井を支えるアーチは、壁際では鋳鉄の柱で受けられずに、壁に付けられた持ち送りに受けられます。20年後の国立図書館でようやく、細い鋳鉄の柱だけで天井を支えることに成功したといえるでしょう。こうした発展段階もロマネスクから初期ゴシックへの発展段階とよく似ていて、ノルマン・ロマネスクなどでリブ・ヴォールトが使われていても、これがしばしば持ち送りで受けられるのに対し、初期ゴシックではこれを細いアン・デリのシャフトが受けるようになるという経過があります。


Pentax *istD + DA16-45mm

とはいえ、サント=ジュヌヴィエーヴ図書館の鋳鉄の柱も十分にその細さをアピールして、この空間を決定づける重要な要素になっているのは間違いありません。


Pentax *istD + DA16-45mm

さて、実は今日はもう1カ所見学してきました。ここは13世紀以来パリの石切場となっていたところで、近年、Monument Historique(歴史的文化財)に指定されました。実はいま、本業のゴシック研究の方で、石材の切り方や組積造の組み方などを調べているのですが、なかなかいい資料が見つからずに煮詰まっているために、何かヒントがないかと出向いてきました。ここの敷地は、パリ14区のコシャン病院の地下にあたり、病院の敷地内から地下へと下りていくとこのような地下トンネルがあります。文化財に指定されたことでいずれ博物館のようにして公開するらしいですが、今のところ非公開。僕としても特に面白い発見はありませんでした。


Pentax *istD + DA16-45mm

地下にはこんなキノコも。地下の、閉ざされた部屋でキノコが生えているという状況は京極夏彦「すべてがデブになる」を思い出しますが・・・



最後に、文化財の日のポスターです。

Posted: 月 - 9月 20, 2004 at 06:00 午前          


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