パリ16区で建築散策



Pentax *istD + DA16-45mm

パリ各区の建築シリーズも、「パリ6区探訪 」、「パリらしくない風景(パリ13区) 」、「パリ7区の建築 」に続いて4区目になりました。もちろん、1回のエントリーでその区の建築を見尽くしているわけではないので、かなり乱暴なくくりではあるのですが。
さて、月曜日に用事でこの付近に行ったのですが、僕の住んでいる15区の隣の区であるにもかかわらず、自転車で16区に行くことはあまりないため、せっかくなので周辺の建築の写真をまとめ撮りしてきました。1枚目の写真は言わずと知れたアール・ヌーヴォー建築の巨匠、エクトール・ギマールの代表作「カステル・ベランジェ」の門扉です。

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カステル・ベランジェのファサードは道路幅に比して高さがあるため、写真が撮りにくいですね。ここではタツノオトシゴのモチーフが随所に見られることが特徴、と書いていて、タツノオトシゴの写真を撮っていないことに気づきました・・・


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カステル・ベランジェでは、ファサード側よりも中庭側に回り込んだ方が、色彩豊かなこの建築の魅力がより際だっているように感じます。


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こちらはカステル・ベランジェの近くにある、同じくギマール設計による旧メッツァーラ邸。世紀末(1896-98年)に建設されたカステル・ベランジェよりも約10年遅い、1910年頃の建築です。


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カステル・ベランジェでは、アール・ヌーヴォー的な装飾が表面にとどまっていたのに対し、こちらのメッツァーラ邸では全体の構成そのものがアール・ヌーヴォー的な曲線に支配され、よりダイナミックな建築となっています。


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続いて、こちらは1912年のギマール自邸。地上階がギマールの設計スタジオ、最上階が画家であったギマール夫人のアトリエ、中間階が居住空間だったとのことです。


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メッツァーラ邸とほぼ同時代の、こちらギマール自邸も、壁面自体が波打つようなバロック的ダイナミズムによって魅力的な外観を作り出しています。


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次は1927年の建築。先ほどのギマール自邸からわずか15年経っただけでここまで建築のスタイルが激変するところに、19世紀末から20世紀初頭のフランス建築の面白さを感じます。


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この建築の設計者はロベール(ロブ)・マレ=ステヴァンスというのですが、マレ=ステヴァンと表記することの方が多いようです。ちょうど建築系の学生とおぼしき集団が先生の引率でこの建築の見学に来ていたので、発音を聞いてみたところ「マレ=ステヴァンス」とのこと。ただ、引率の先生ではなく、僕と対抗してデジカメで写真を撮りまくっていた学生に聞いただけなので、まだ少し「?」は残りますが、とりあえずここでは「マレ=ステヴァンス」でいくことにします。


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この建築の全体を写した2枚上の写真の右端に、小さく赤い円盤が見えていますが、その部分を見上げた撮ったもの。マレ=ステヴァンスは、当時の映画のセットを手がけていたことでもでも知られる建築家です。


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こちらもマレ=ステヴァンスによる建築。実はこれらの建築がある通りは、その名も「マレ=ステヴァンス通り」という袋小路で、そこに彼が設計したアトリエ集合住宅が軒を連ねています。写真の建築は内装の改装作業中で、袋小路には工事車両が数台止まっていて、さらに建築学生集団もあちこちで写真を撮っているため、袋小路の全体写真は撮れませんでした。


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静かな袋小路が大騒ぎになっているため、驚いた犬が窓から窓辺に出てきてキョロキョロしていました。


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この地区最後を飾るのはやはり建築家ル・コルビュジエでしょう。こちらは現在、ル・コルビュジエ財団となっている、旧ラ・ロッシュ=ジャンヌレ邸(1924年)。袋小路の突き当たりに位置する緩やかなカーブを描く建物と、右手の建築とが連結される構成。ここは有料で内部の見学もできますが、今回は中には入りませんでした。


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こちらが突き当たりのカーブを描くファサードを持つ棟。当然、内部も壁が曲面となる構成で、そこに配されたスロープとともに独特の空間が生じています。この部分はピロティで持ち上げられていますが、写真に写っている細い円柱(ピロティ)が下部の空間に緊張感を与えているようです。それにしても、西洋建築の伝統であるオーダーではなく、彼が敢えてピロティ(杭)という言葉を用いたところに、過去との断絶を明確に宣言しているように感じます。


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以前、ここに見学に来たときには気づかなかったのですが、建物の外部にはこんな水槽が設置されていました。内部の見学を満喫してしまうと、外部の観察は疎かになってしまうようです。しかし、これにはいったい何の用途があるのでしょう。

Posted: 火 - 3月 22, 2005 at 02:03 午前          


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