オペラ座のシンデレラ



Pentax *istD + DA16-45mm

ついに、オペラ・ガルニエに行ってきました。あいかわらず、いま執筆中の論文はまだ終わっておらず、家に籠もる日々が続いているのですが、今日は夕方からオペラ座方面へ。


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オペラ座はマチネがない日には内部の見学もできるのですが、「きっといつかオペラ鑑賞に行くだろう」と、今日まで内部見学を我慢していたわけです。せっかくこの由緒正しきオペラ座で見るなら何か古典的な名作を見たい、と選り好みしていたところ、大作は収容人数の多い新オペラ座(バスチーユ)での公演が多く、今日ようやくパレ・ガルニエで見たい演目に巡り会うことができました。ちなみに今日はオペラではなくバレエ。演目は「シンデレラ」です。


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バレエ「シンデレラ」は僕の想像に反して、それほど古典的なものではありませんでした。第1幕の、継母と姉妹たちとシンデレラが暮らしている家は、なんだかアール・デコ風のインテリア。そして王子様が出てくるお城にいたっては、まるでフリッツ・ラングの『メトロポリス』の世界です。他にもロシア・アヴァンギャルド的な巨大な機械が背景となるなど、ディズニーで慣れ親しんだシンデレラのイメージとはほど遠い、20世紀初頭のモダニズムの世界。


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舞台セットがあまりに面白いので、珍しく休憩時間にプログラムを買い求めたのですが、実は今回のシンデレラ、この演出での初演は1986年で、それ以来何度か再演されているものだそうです。あまり詳しくは書きませんが、物語の舞台設定は1930〜40年代のハリウッドとのこと(それがわかればストーリーは想像できると思います)。プログラムの中にもちゃんとラングの『メトロポリス』の写真が載っていました。敢えて『メトロポリス』的舞台背景を持ってきたということのようです。ちなみにプロコフィエフがバレエ『シンデレラ』を作曲したのも1935〜40年ということなので、『メトロポリス』が公開された1926年の約10年後ということになります。今回のシンデレラの演出は、時代背景をちょうどこのあたりに定めていたというわけです。ともすると映画音楽のようにも聞こえるプロコフィエフの音楽も、この舞台に意外とマッチしているな〜と聞いていましたが、実は、1891年ウクライナ生まれのプロコフィエフはロシア・アヴァンギャルドとの関係も深く、1920年代にはロシア・アヴァンギャルドのバレエのために曲を作ったりもしていたとのこと。今回の『シンデレラ』の演出は、そういうきわめて戦略的な意図を持ってデザインされたものだったわけですね。


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衣裳デザインは森英恵さんでした。途中、お城の舞踏会(ならぬハリウッド・オーディション)に出かける意地悪な姉妹たちが、着替えるために出してきた衣装箱にはしっかりHANAE MORIのロゴが入っているなど、遊び心も。


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ところでシンデレラの中でもっとも重要なモチーフである「ガラスの靴」というのは、もともとは「リスの毛皮」の靴だった、という話を以前フランス語会話のクラスで教わりました。フランス語のガラス(verre)とリスの毛皮(vair)の発音が同じだったため、どこかで誤解が生じたようです。手元にある白水社仏和大辞典によると、原作者のペロー自身が、同音ゆえに"vair"を"verre"と綴ったと書かれています。


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今日はすっかり、写真と内容が一致しないエントリーとなってしまいました。シンデレラの舞台の写真は3枚目のカーテンコールの写真だけで、残りは初めて入ったオペラ・ガルニエの内観写真です。最後の写真は、今回とったボックス席の入口の扉についた丸窓の写真。

Posted: 火 - 4月 26, 2005 at 08:44 午前          


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