イル=ド=フランスの古都、エタンプへ



Pentax *istD + DA16-45mm

5月は外に出るという目標通り、今日はエタンプの町までゴシック教会堂の調査に行ってきました。エタンプはパリの南50kmほどに位置する小さな町で、パリからRER(高速郊外鉄道)に乗れば約1時間の終点となります。この町は11〜12世紀にかけてカペー王家が居を定めたイル=ド=フランスにいくつかある古い王都の一つで、中世には非常に繁栄していたと考えられます。実際、小さな町にもかかわらず複数の立派なゴシック教会堂があり、そのうち2つは僕の研究にとっても重要なものとなりそうです。


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ここエタンプのサン=マルタン教会堂は、事前に観光案内所のHPで調べたところでは水曜の午後は開いているはずだったのですが、実際に行ってみるとオープンは日曜日のみとなっていました。3月の北イル=ド=フランスの調査旅行でも管理の難しさから扉を閉ざしてしまっている教会堂に多く出会いましたが、それらの寒村に比べれば《都市》と呼んでもいいようなエタンプの町でさえも、状況は似ているようです。中に入れなかったのは残念でしたが、今日はこの斜塔が見られただけでも満足でした。


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ところで今日は、昨日にもまして天気が変わりやすく、僕がエタンプの町にいた間だけでも、晴れ間と雨とが交互に5回ほども繰り返していました。青空が見えたかと思うと、夏の入道雲のような雲が次々にのぼってきては雨を降らして、また去っていくという慌ただしい天気。今日の写真の青空は、貴重な晴れ間に急いで撮ったものばかりです。


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エタンプの町はずれの小高い丘の上には、12世紀前半にルイ6世が建設した城跡に、物見の塔が町を見下ろしています。塔を隠すように生い茂っているのは、白い花を咲かせたマロニエの木々。


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近づいてみると、新緑の美しい緑の中から白い塔が現れてきます。


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塔の内部に入ることはできませんが、周囲にも塔の中にも照明装置が設置されていて、夜になるとライトアップされるようです。塔の構造は、シャトー・ガイヤール と同系列のもののようですが、12世紀末にイギリス国王、獅子心王リチャードのために建設され、フランス国王フィリップ・オーギュストによって奪還されたガイヤール城に比べると、そのフィリップ・オーギュストの祖父に当たるルイ6世によって建設されたエタンプの塔は、規模はガイヤールに劣るものの、その古さからきわめて貴重な遺跡ということになります。


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最後にようやく、今日の目的地ノートル=ダム=デュ=フォール教会堂へ。もう一つの目的地であったサン=マルタン教会堂は中に入れませんでしたが、こちらは3時半になってようやく扉が開きました。


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イル=ド=フランスの重要な初期ゴシックの教会堂であるここでは、扉口の一つに先日シャルトル大聖堂 まで見に行った人像柱が見られます。ただし、その首はフランス革命の時に破壊されてしまっています。


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この教会堂は、地上部分は12世紀に建設されたものですが、地下にはそれより約100年古い11世紀初頭のクリプト(地下祭室)が残っています。この天井を飾っている彩色された壁画は、イル=ド=フランスでは唯一のロマネスク時代の彩色画です。


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教会堂そのものも、変則的な増築を繰り返した結果、他の教会堂では見られない複雑な平面構成となっています。一般にフランスの教会堂では、中央に身廊と呼ばれる天井の高い部分があって、その脇に側廊と呼ばれる天井の低い部分が並ぶのですが、ここでは天井高を身廊に合わせて、その周りに増築していったため、開放的で明るい、広々とした空間ができあがっています。

Posted: 木 - 5月 5, 2005 at 06:53 午前          


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