パリ6区探訪



Pentax *istD + DA16-45mm

先週、パリ第1大学の戸田君 に会ったときにエコール・デ・ボザール(国立高等美術学校)にてイタリア・ルネサンスの建築家アルベルティの展覧会を開催中との情報をもらったので、気分転換に行ってみました。展覧会自体はパネル展示中心でたいしたことはありませんでしたが、考えてみたらボザールの中に入ったのは初めてでした。写真はボザール内の回廊。
今日は、ボザールへの行き帰りにパリ6区のいくつかの建築を写真に撮ってきました。


Pentax *istD + DA16-45mm

まずはサン=ジェルマン=デ=プレ教会堂。エコール・デ・ボザールは、この脇の道を入ってすぐのところにあります。サン=ジェルマン=デ=プレ前の広場ではクリスマス市の出店が並んでいました。今週末にはサン=シュルピス教会前の広場でもう少し大規模なクリスマス市が開催されるらしいので、そちらにも行く予定。


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続いては、なんということもない(ように見える)モダニズムの集合住宅。ポル・アブラアムという建築家の作品です。建築家として彼の名前がどの程度知られているのかわかりませんが、ゴシック建築を専門にしている僕にとって、この名前は馴染みのあるものです。ヴィオレ=ル=デュクが、ゴシック建築はその構造が論理的かつ合理的にできていると評価した、いわゆる「構造合理主義」を批判した人物として、ポル・アブラアムは知られています。彼がその論拠としたのは、第一次世界大戦時の砲撃によって被害を受けたゴシック大聖堂において、リブが剥落しても天井のヴォールトそのものは崩落せずに残っている実例が存在することでした(彼の主要論文「ヴィオレ=ル=デュクと中世の合理主義」は、飯田喜四郎『ゴシック建築のリブ・ヴォールト』中央公論美術出版にて詳しく紹介されています)。この議論の詳細はここでは省略しますが、当時のゴシック研究に多大な影響力を有した論文を著した人物が、一方でこういうモダニズム建築を設計しているということに、近代フランスの面白さを感じます。モダニズムという新しい様式による建築に対するアプローチと、ゴシック建築の構造の合理性を議論することが、少なくとも現代の建築界で考えられるよりは遙かに近いところにあったのでしょう。多少の羨ましさも感じます。自身の研究を顧みずにはおれません。
ちなみにこの建築は、正確には6区から少しはみ出して、7区にある建築でした。


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続いてはメトロのオデオン駅のすぐ近くにあるレストラン「ル・プロコープ」。この前身であるカフェ「ル・プロコープ」は世界で最初のカフェとして知られています。1686年創業。たしかコーヒーはアラビア世界からウィーン経由でヨーロッパに広がったのだと記憶していますが、そのための場を提供する「カフェ」というスタイルはパリで誕生したということでしょう。ちなみに創業者のプロコピオはイタリア人。カフェの歴史はインターナショナルですね。
オープン・テラスにはなっていないようです。世界で初めてオープン・テラスを考案したカフェは別にあるということでしょうか。


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ここが世界最古のカフェであることを誇らしげに説明するパネルも設置されています。ただし、DBメリメによると現在の建物は18世紀に建設されたもののようです。


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この界隈で面白かったのは、「ル・プロコープ」の裏口も面している路地裏空間クール・デュ・コメルス・サンタンドレでした。空間のあり方としては屋根のないパサージュという感じですが、名前が示しているのは、ここが商売のための中庭であるということ。先日訪れたヴィラージュ・サン=ポール とともに、もう一度ゆっくり見学したいところです。


Pentax *istD + DA16-45mm

その後訪れた建築専門書店「ル・モニトゥール」にて建築家の坂茂さんによく似た方をお見かけしました。ご本人だったのでしょうか。

Posted: 水 - 12月 15, 2004 at 05:17 午前          


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