Theme
海野研究室では、木造建築を中心に原始から近代まで、幅広い時代を研究対象としています。地域も日本を中心としていますが、同じ木造文化圏の東アジアも研究の範疇です。そのため研究室や指導教員の研究分野にとらわれることなく、個々人の学術的関心に応じた研究を進めることで、個人の専門領域を深めていくことを期待しています。
個人の研究活動に加えて、建築史学と社会とのかかわりの面では、現存する建築の調査・研究を通じて、「モノ」をみる基礎スキルの習熟、多岐にわたる問題点の発見と解決方法の開発の経験を積むことを期待します。建築史学の専門性と実地の現地調査よる社会性の両輪によって広い視野を備えた人材を育成したいと考えています。
なお日本建築史の先行研究のほとんどは日本語の文献であり、前近代の文献資料を読解する必要も多いため、日本語による研究・コミュニケーションを必要とします。
研究室の主なテーマ
- |日本を中心とする東アジアの木造建築技術史
- |東アジアにおける造営体制と儀式
- |建築メンテナンスの歴史
- |文化遺産の保存・継承に関する枠組み
海野の研究テーマ
古代日本と東アジアの建築技術の伝播
発掘遺構・現存建築・文書・絵画資料・石窟彫刻などを通して、東アジアにおいて、どのように建築技術が伝播したかという点について、総合的に研究しています。伝播の介在の可能性の考えられる絵画・小建築などによる建築情報の抽象化とその解釈も研究対象としています。
古代日本の中央と地方の建築技術の伝播
古代の中央で大寺院や宮殿が建設され、地方でも官衙や国分寺などの諸施設が建てられています。この地方における大造営の過程で、中央から地方に技術伝播が行われたと考えられます。いっぽうで奈良時代の地方建築は現存していないため、文献資料に残る情報や発掘遺構を材料に研究を進めています。
建築メンテナンスの歴史
現存する歴史的建造物の多くは近世以前にも修理を重ねて、現在まで継承されてきています。例えば東大寺大仏殿や薬師寺東塔などには支柱をたてるなどの方法がとられてきましたが、これらのメンテナンスに関する歴史的な検討はなされていません。こうした前近代の建築メンテナンスを歴史的として捉え、建造物のライフサイクルに関する研究をしています。
建物の復元と復古(復元学)
過去の建築を復古的に造る試みは日本建築史を通じて行われており、大きな特徴の一つです。また各地の遺跡の発掘情報をもとにした「復元」や建造物の修理において、痕跡をもとに「復原」を一時的なプロジェクトとしてではなく、学術的にとらえることで、総合的な学問領域の構築を目指しています。
木造建築の保存・修理に関する国際的枠組み
日本では解体修理をはじめ、継続的な木造建築の修理が行われてきています。世界的に見たときに、こうした部材レベルまで気を配った修理方法や修理時の調査による情報の蓄積は大変珍しく、学術的にも高い価値がある方法です。木造建築の保存・修理に関して、日本の方法を海外に発信しつつ、国際的な木造建築の修理に向けた枠組み作りを目指しています。