2005.09.08
イングランド建築調査6
日目!

この日は、昨夜の宿を求めた町のヨーク大聖堂を見ることなく、朝から車に飛び乗って北へ向けて出発。
ダラム大聖堂の公式サイトの情報で、「この日は午後からの式典のために午前中のみ見学可能」
ということがわかっていたための緊急措置でした。
教会見学をするうえでフランスとイギリスの大きな違いは、フランスではほとんどの教会堂に自由に入れるのに対して
イギリスでは(寄付という名目の)拝観料をとるところが多いということ。
その代わりにイギリスでは、それぞれの大聖堂がホームページを運営していて、様々な情報を提供してくれています。
何度も同じ教会堂を見学したいと思うと拝観料はあまり嬉しいシステムではありませんが、
今回の僕の旅行のように、各地を転々としながら色々な教会堂を見ようと思う場合には、
詳細な情報が提供されているというのは、とてもありがたいことでした。


というわけで、ついに念願のダラム大聖堂にたどり着きました。
今回の旅の目的はいくつかありましたが、なんといっても最大の目的地はここダラムです。


本来は内部の写真撮影禁止なのですが、正式の手続きを踏んで許可をいただきました。
イギリスでは、しばしば教会堂内での写真撮影の許可を必要とする場合がありますが
たいてい受付のところで入場料と一緒に撮影料を払えば事足ります。
しかし、ここダラムでは研究のために写真撮影をしたいと申し出たところ、大聖堂からかなり離れた事務所まで案内され
そこでようやく撮影許可をいただきました。


ノルマン・ロマネスク建築の聖地ダラムは、リブ・ヴォールトが初めて教会堂の天井に用いられたところであり
ゴシック建築の起源をたどっていくと、必ずここに行き着くことになるという、きわめて重要な建築です。


とにかくどこを見ても感動の連続。
初めてリブ・ヴォールトを用いたこのダラムにしても、あるいは最初のゴシック建築となったパリのサン=ドニにしても、
先例のない実験的な試みということで古拙的なものになりそうな気がするのですが、
どちらにしても予想をはるかに裏切る、洗練された完成度の高い建築になっています。
だからこそ、単なる「前衛」「異端」で終わらずに多くの追随者を生み、「様式」として確立したのかもしれません。


こちらはダラム大聖堂の有名なドア・ノッカー。


キリスト教の古い聖地にふさわしく、ダラム大聖堂は理想的な地理的ロケーションに建てられています。
曲がりくねったウィアー川に挟まれた高台に聳え立つ大聖堂の姿は、幻想的な物語のよう。


深い緑と静かな水面、それを見下ろす石造の大聖堂。自然と人工物の融合を感じさせます。




午後は来た道を南に戻り、再びヨークへ。
西正面に双塔をいただく構成は、ノルマン・ロマネスクやフランス・ゴシックの特徴です。


内部は少しウィンチェスター大聖堂に似た装飾的ゴシック。


ところどころでパーベック大理石の使用も見られました。



内陣に飾られていた、蜘蛛のような妖しい美しさが際だつシャンデリア。




さて、この日の宿は北方の大都市リーズ。
前日に宿泊したヨークからの移動距離はごく僅かですが・・・


この日リーズに宿を求めたのは、このパサージュが見たかったため。
19世紀に毛織物産業で発展を遂げたリーズでは1900年には既に50万人の人口を抱えていたといいます。
1878年から1900年のあいだに、8カ所のパサージュが建設されていますが、
ここカウンティ・アーケードはその中でも最大規模のもの。


すでに店仕舞いの時間でしたが、想像していたよりもはるかに華やかなパサージュで、
すっかり気分も高揚してしまいました。


カウンティ・アーケードに並行して走っていたクイーン・ヴィクトリア・ストリートにも、
1990年にガラスの屋根が架けられ、新たにパサージュとなりました。
これによりカウンティ・アーケードとそれに直行していたクロス・アーケードが、
全体として巨大な内部空間となり、現在この一画はヴィクトリア・クォーターと呼ばれているようです。


パサージュをめぐって歩いていると、こんな建築が目に飛び込んできました。
教会堂建築が商業施設に転用されています。
半円形に張り出したガラスのショー・ウィンドーが、小チャペルのアナロジーとなっていて
この建築の過去を強烈にアピールしています。
W.ベンヤミンはそのパサージュ研究の中で
「たくさんの小聖堂のある教会の身廊としてのパサージュ」という表現を使っていますが
ここは比喩ではなく、そのままそれが具現化された空間となっているのでは?
閉店後のため、中に入れなかったのが残念。


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